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James Yaffe 著 小尾 芙佐 訳
早川書房 2015年 新品
年を取ったらこんな風になりたいなと思ってるモデルケースが僕には10人ちょっといて。そのうちの何人かは、小説の中の人物だったりする。その1人は、この、ママだ。
探偵を職業とする主人公は毎週金曜日の夜、妻と一緒に、NYのブロンクスに住むママを訪れて食事をする。その時に仕事の話をすると、プロの探偵でもなんでもないママが見事な推理で毎回解決する、というお話。ファンの間では「ブロンクスのママ」シリーズと呼ばれているらしいが、その短編傑作集。
これは、ネーミングとロジカルシンキングとシニカルジョークの教科書。
息子がディナー中に仕事の話をして、ママはそこに出てくる人名をちょっと間違い、学歴の高い奥さんが口を挟むが皮肉で返しつつ、事件について簡単な質問をし、見事なまでに解決する。話はテーマを変えつつ、大体毎回同じ構成。水戸黄門ばりに。だから、いよっ、待ってました!という気分に毎回なるのだが、その解決の仕方が、常人が見落とすようなところから見事に推理するわけで、その筋が見えた時の、点と点が結ばれる気持ち良さ。その論理構成の見事さ。ロジカルシンキングを学びたければ、昨今ビジネス界で流行ってる方の論理的思考の本は捨てて、これを読んだ方がいい。
ママが常に放つ皮肉も非常に勉強になる。シニカルはウィット。良い年輪を重ねてこそできる人生の幹を感じる。ま、ママは敵に回したくないタイプだが、ちと真似してみたくなるあたりが、非常に魅力。
そしてネーミング。原題は”Mom knows best”。直訳すると、お母さんが一番知っている、なわけだが、これだとちょっとグッとこない。ちょっと調べてみて分かったのだけど、これ多分、昔のヒットラジオドラマ「パパはなんでもしっている」から来てるんじゃないかと思われる。そっちの原題はFather Knows Best。つまり、このラジオの邦題を、こんな風に訳した人が偉いんだな。
つまり、そうやってgood titleは、色々と引用されつつ、後世に引き継がれていくわけで。いいタイトルは後世に影響を与えるわけです。勉強になります。
さておき。純粋に面白い本なので、秋の夜長にオススメしたい1冊なのです。ぜひ。
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