









南野忠晴 著
岩波ジュニア新書 2011年 新品
先日の日曜日、佐賀県のイベントでファシリテーターを務めてきました。鍋島藩の伝説の藩校、弘道館の哲学や方法を引き継いで21世紀型で行う「弘道館2」というもの。https://www.kodokan2.jp/
今回の講師は、Forbes JAPAN編集長、藤吉雅春氏、佐賀県鳥栖市出身。テーマは「発信学」。今、若い人たちに「どんなスキルが欲しいか?」と聞くと「発信力」が上位に来るらしいんですね。それで発信力を磨くことをテーマに。面白い話はたくさんあったんですが、その中で1つ。
「記事のタイトルはQ、読者への問い。そして内容がA、答えになっていると人は読みたくなる」と。
今日ご紹介しているこの本がまさにその構造。正しいパンツのたたみ方、について、書いてなくはないですが、それはあくまで話のきっかけで。書いてあるのは、パンツの「たたみ方」というより、人生や、人生の楽しみの「広げ方」。
著者は十三年間、英語の教師をされたのちに、家庭科の教員免許を取られた高校の先生で、ご自身の大学の一人暮らしと育児に加えて、学校の生徒たちの無気力が「心の問題ではなく生活の問題ではないか?」との気づきから、家庭科の勉強をされて、転身されたという経歴の持ち主。すでに面白い。
「家庭科を学ぶうちに、わかったことがあります。(中略)暮らしがある程度安定していれば、心もからだも穏やかでいられるし、考え方も前向きになって、頑張ろう、がんばり続けようという意欲が湧いてくるということです。」
このまえがきの抜粋に象徴されるように、生活力、自立、を生徒に教える、興味を持って取り組んでもらう授業をされています。教え方が面白い。常に、既成概念に揺さぶりをかける。
例えば、家庭科の教科書の最初には、家族についての章が最初の方にあるそう。で、先生は、家族の定義についてみんなに投げかける。
「家族と聞いて頭に思い浮かべるのはどんな顔ぶれでしょう?どうしてあなたたちは、その人たちを自分の家族だと思うのかな?」「一緒に暮らしてるからだと思います」「ふーん、そしたら、単身赴任してるお父さんとか、大学行ってて下宿してるお姉ちゃんとかは家族じゃないっていうことやね」とか。
「血のつながりがあるのが家族」「じゃあお父さんとお母さんは血が繋がってないけど。ペットも違うってことやね」とか「猫は家族と思う人?じゃあカメは?サボテンは?」と手を挙げさせてその理由を問い詰めて(突き詰めて)いく。
労働(何のために働くか)やお金についても、つまり、自分たちの身の回りに当たり前にあることについて、こんな考えさせられるやりとりが満載でありつつ、弁当を作る、朝起きる、など自立の入り口になることを促す、その授業がダイジェストでたくさん載ってます。
おそらくそれは、そもそもの、先生の家庭科の定義が、我々が持つ、裁縫とか調理とかの実習=家庭科、という既成概念を、ハッとさせて揺さぶるものだからではないかと思われて。
家庭科は、主要教科に対して保健体育、芸術とともに副教科と呼ばれていますが、その3つを「人生を豊かにする主要三教科」と呼び、「家庭科=暮らしの感性を磨く教科」であるとしたり、
「家庭科はどんな暮らし方が自分にとって快適なのかを追求し、快適にするための方法身につける教科」
「この社会の中で他者とともに生きていく力を身につける教科」
「家庭科で身につけたいのは、パーソナルな技術、つまり『自分を楽にするための技術』『自分の暮らしを豊かにする技術』です」
そこも味わっていただきたいところです。
「正しいパンツのたたみ方」というタイトルで始まるこの本の締めは、この一言。
「みなさんには、ぜひ自分を好きになって、自分という人間に夢中になって生きていって欲しいと思います。」
先生のおかげで、ちょっとまた人生面白くなりそうな予感です。
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