向坂くじら 著
NHK出版 2024年 新品
世の中には、めんどくさい奴とめんどくさくない奴の2種類がいて、僕はどちらかというとめんどくさい前者の方に分類されると思う。
みんなが右に行く時には左に行きたい。そもそも、を、考えないと気が済まない。良いタイトルの本だけを集めていて、その本屋もやっている人は、まあだいたい、めんどくさい奴に違いない(お付き合い有難うございます)だろう。だから、こういう本を手に取り、共感を覚える。
詩人の向坂くじら氏が、自分の日常、感覚、違和感、論理、疑問などを通じ「ふだんは見過ごしている言葉のところでわざわざ立ち止ま」り、改めて言葉を定義していくエッセイ集。一番端的に説明できそうなところを引用すると
「そんなふうにして、たくさんの言葉を、本当は見過ごしながら暮らしている。わかったような顔をして、実際のところそこまでの不自由もなく、なんとなく暮らせてしまっている。けれどもこのエッセイでは、あえてその尻尾をつかまえて定義してやろうというのだ。」
という本。
ともだち、飲む、愛する、やさしさ、ときめき、さびしさ、わかる、寝る、etc..。そして、定義、も定義されている。
他人とのコミュニケーションがスムーズではない(=誰とでもすぐ仲良くなる性質ではない)著者が、詩人という言葉のプロのフィルターもフルに活用しつつ、言葉を定義していくプロセスが見えることが面白いのだが、惹かれるのは、世界観。著者の名前、ステレオタイプでないキャラクター、夫や友人とのやり取り、随所に見える気の利いた言い回し。そしてタイトル。
由来は、著者が運営する国語教室「ことぱ舎」。言葉の、ば、を、ぱ、にした理由は「かわいいから」というが、奥が深い。「『言葉』で痛い思いをしてきた人たちを、あとずさらせずにすむような看板にしたかった。『言葉舎』では難しいだろう。」「わたしたちにこそ、ことばを遊ぶことと学ぶこととが、その双方がどうしても必要なのだ、と思ってやまない。」
ことぱの観察、じゃなくて、言葉の観察だったら、good title booksで紹介していないし、あなたもこのページをクリックしていないだろう。
ぱの引力によって、くじらに飲み込まれる。その経験は、損ではない。
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